比類なき大帝国 ローマの興亡ー29
2008年 05月 06日
日本の諺で「栴檀は双葉より芳し」というのは、イタリアにおいては「薔薇ならば薔薇の花が咲くだろう」と言う。
知力ではギリシャ人に劣り、体力ではケルト(ガリア)やゲルマン人に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣っていたローマ人が、これらの民族に優れていた点は、何よりもまず、ローマ人が持っていた開放性にあったと言える。
古代のローマ人が後世の人々に遺した真の遺産とは、広大な帝国でもなく、二千年経ってもまだ立っている遺跡でもなく、宗教が異なろうと人種や肌の色が違おうと同化してしまった、彼らローマ人の開放性なのである。
ローマ戦士の軍靴の響きはとうの昔に消え、白亜に輝いた建物の数々も瓦礫の山と化した現代になってなお、人々が遠い昔のローマを、憧れと敬意の眼差しで眺めるのを止めない理由である。
翻って我ら現代人を見渡せば、あれから二千年が経っていながら、宗教的には非寛容であり、他民族や他人種を排斥し続けるのをやめようとしない。
まさに「ローマは遥かなり」である。